「私のパンはどこ?」
ガーナの村を歩いていると、そんな風に声をかけられる。
昔、遠出をした人が、お土産に持って帰っていたかららしい。
今もなお、それは変わらない。
アクラから3時間、トロトロというワゴン車を相乗りにした交通機関で移動すると、その途中、道路脇にあるパン屋さんに停まる。
店員が、トロトロに群がり、窓ガラスからパンを売りに来る。
ひどい時は、窓際にいる僕の顔に当たる勢いで、奥の客にアピールをしてきた。
あふれるパン売りの中から、ホームステイ先の家への土産に、ひとつパンを買う。
150円ほどだ。
遠出ができたのは、ある程度、お金がある人だった名残かもしれない。
「私のパンはどこ?」と、村の人が声をかけてくる。
「あっちに置いてきた」と言うと、「明日持ってきてね」と声をあげる。
翌日に、持っていくことはない。
しかし、怒りも悲しみも見せず、変わらず同じ風に声をかけてくるのだ。
「私のパンはどこ?」と。