テレビや新聞から情報を知った気でいると、すごく怖いことになるのかもしれない。
イラク戦争の少し後に中東に旅をしたり、 「アラブの春」と言われる運動が始まる少し前のシリアに住んだり、 イギリスの大学でマスコミ学を(ほんの数ヶ月だけだけど)学んだり、 人生の10%くらいを海外で過ごしていると、日本で流れるニュースに違和感を感じています。
そう思って、色んな本を読んだり、色んな人の話を聞いていると、 学校やメディアのいう「世界の見方」とは違った真実が見えてきます。
今のシリアを取り巻く状況にしても、 「アラブの春」など「SNSによる民主化革命」というものにしても、 日本が向かっている方向にしても。 そんなわけで、 僕の世界の見方を変えてくれた本を11冊(とちょっと)、紹介したいと思います。
⒈堤 未果『ルポ 貧困大国アメリカ」(2008年、岩波新書)
オススメ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★
人生に与えた影響度:★★★
シリーズで読んでほしい度:★★★★★★
「アメリカで起こったことが10年後に日本にやってくる」 それはビジネスの話ですが、政治でも同じでは?ということで、すごく参考になります。
というのも、アメリカで起こったことが、日本でも起こっているということが、 堤 未果さんの「貧困大国アメリカ」シリーズを読んでいると感じるからです。
奨学金による借金や、生徒の成績に左右される先生の給料や助成金から始まる教育の崩壊、 医療費や医療保険から生まれる借金、薬漬けによる病院の利益重視の治療などなど。
なぜ日本が今、軍事化しようとしているのか。 なぜ日本で今、デモで立ちあがる人たちがいるのか。
そうしたことの一片がわかる著書です。
続編である、『ルポ 貧困大国アメリカ II』や、『(株)貧困大国アメリカ』
も、読み進めていくと、より理解が深まります。 デモによって就職が不利になった人、 いわれもないことでテロリスト扱いを受けて逮捕され、自由な発言ができなくなった人、 公的に尋問や拷問が行なっていないとされるのは、第三国で下請け企業が代理で行なっているという事実、 そうしたことがアメリカで起こっています。 ひょっとしたら、これから日本で起こるかもしれない、というのは、『アメリカから〈自由〉が消える』
を読んで感じました。
また、メディアについて、『社会の真実の見つけかた』や『政府は必ず嘘をつく』
を読むと、自分で情報を集めていくことの重要性に気付くかと思います。
是非、ご一読を!!
2.国枝昌樹 『報道されない中東の真実 動乱のシリア・アラブ世界の地殻変動』(2014年、朝日新聞出版)
オススメ度:★★★★
読みやすさ:★★★
人生に与えた影響度:★★★
シリア報道の嘘を知れる度:★★★★★★
シリアの「内戦」について知るには、これ以外ないという一冊。 「民主化デモ」による「内戦」ではなく、「外国勢力の干渉による情報戦争」だと気付けます。 (かなり初期の段階で言われていたのですが、マスメディアの干渉により大手メディアでは隠されていました)
元シリア大使である著者が、騒乱後のシリアに入ってシリア政府の人たちからインタビューをしています。 また、メディアの情報も様々な国のものから収集しており、客観的にシリアで起こったことが分析されていて、 日本語の情報だけでは非常に危険だということをひしひしと感じます。
アサド政権が清廉潔白だとは言わないが、と断りつつ、 「アサド政権が悪だ」ということだけを伝えているメディアに一石を投じています。 シリア騒乱について知りたい方は是非、読んでほしいです。
3. 馬渕睦夫『世界を操る支配者の正体』(2014年、講談社)
オススメ度:★★★★
読みやすさ:★★
人生に与えた影響度:★★★
「民主化革命」の嘘について知れる度:★★★★★★
元ウクライナ大使が「ウクライナ危機」を通して見えた世界の構造。 プーチンをシリアのアサド大統領に置き換えた時、全く同じことが「アラブの春」で起こっていたことに気付きます。
「SNSによる民主化革命」がいかに、外部から作られたものなのか。 感情的にではなく、冷静に世界を見る視点をもらえる本だと思います。
4. 高城剛『高城未来研究所「Future Report」』
オススメ度:★★★★★
読みやすさ:★★★★★
人生に与えた影響度:★★★
メルマガも購読したくなる度:★★★★★★
「シリア難民の元凶は、数年前までアサド政権だと言われてきましたが、インターネット時代に暴かれる真実が少しずつ浸透し、どうやら民主的に選ばれているアサド政権の問題ではなく、米国共和党軍産複合体やイスラエルによって作られたISISや反政府ゲリラこそが大きな問題だ、という構造的な事実がわかってきました」(Future Report Vol.225)
毎週、世界の違う場所を飛び回りながら、メディアには出なくても非常に影響力のあるビジネスを展開している高城氏。 「沢尻エリカの元旦那」としか認識がない人も多いですが(僕もそう思ってました)、とんでもない人でした。
オススメは、この本というよりメルマガ。 「世界情勢」「生き方」「ビジネス」など幅広い学びを得られて、毎週金曜日が本当に楽しみです。 末尾にあるQ&Aコーナーが面白く、それをまとめたものが本となっています。 特に黒本は、紙の本では言えないような内容がまとめられています。
とはいえ、常にアップデートされているメルマガを購読するのがオススメです。 「アラブの春」や、パリのテロの裏側に何が?ということも、すぐに知ることができました。
5. フランク パヴロフ『茶色の朝』(2003年、大月書店)
オススメ度:★★★
読みやすさ:★★★★★
人生に与えた影響度:★★
日本の「兆し」に気付かせる度:★★★★★★
ファシズムは、或る日突然やってくるのではなく、ジワジワと変化を起こしていく。 まさに今の日本を表しているような気がします。
堤未果さんの本と合わせて読むと、より今の日本の向かう先を肌で感じるかと思います。
6. 安部 芳裕 『金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った 』(2008年、徳間書店)
オススメ度:★★★★
読みやすさ:★★★★
人生に与えた影響度:★★★★★
このままじゃまずいと分かる度:★★★★★★
僕が中東に住んでいた時に読んでいた本。 中東で聞くニュースや、人々の話が、日本語のニュースと大きく違うことを知り、 この本を読んで、つじつまがあっていく、という感じでした。
今まで紹介した本が具体的な一国に焦点を当てているのに対し、 この本で全体が網羅されている感じなので、最初の一冊としてオススメです。
同じ著者の世界超恐慌の正体【コーポラティズム vs 国民国家の最終戦争】 (晋遊舎新書 S08)は、経済に焦点が当てられていて、堤未果さんの本
と合わせて読むとより説得力を持って読めると思います。
7. THINKER「偽情報退散! マスコミとお金は人の幸せをこうして食べている」( 2011年、徳間書店)
オススメ度:★★★★
読みやすさ:★★★★
人生に与えた影響度:★★★★★
ここまで色んなものが関連しているのかと分かる度:★★★★★★
お金の仕組みについて、非常にわかりやすくまとめられています。 先ほど紹介した、安部 芳裕さんの本 とテーマ的にはすごく似ています。
今の日本にある「違和感」について知る上では、入門書となる一冊だと思います。 WEBサイトもあるので、まずはそれを読んでみてもいいかもしれません。
8. 田中 優、樫田 秀樹、マエキタ ミヤコ[編]『世界から貧しさをなくす30の方法』(2006年、合同出版)
オススメ度:★★★
読みやすさ:★★★★★
人生に与えた影響度:★★★★
当たり前の日本の生活が何に支えられているかを知れる度:★★★★★★
「国際協力をやって、何の意味があるの?」 「日本だって大変なのに、どうして他の国に対して協力しなくちゃいけないの?」 といった疑問に対して、いかに僕らの生活が途上国に支えられているかに気付かせてもらえます。
9. ジャン=ピエール ボリス 『コーヒー、カカオ、米、綿花、コショウの暗黒物語―生産者を死に追いやるグローバル経済』(2005年、作品社)
オススメ度:★★★★
読みやすさ:★★
人生に与えた影響度:★★★★★
何気なく買うものを考えたくなる度:★★★★★★
読むのにちょっと気合は要りますが、 お買い物するときに「何気なく」から「考えて買う」という変化をあたえてくれるような一冊。
10. ジェシカ・ウィリアムズ『世界を見る目が変わる50の事実』(2005年、草思社)
オススメ度:★★★
読みやすさ:★★★★★
人生に与えた影響度:★★★★
子どもに教えたくなる話が載ってる度:★★★★★★
学校の先生や、子どもがいる親に特に読んでほしいと思う一冊。
ただ、広く網羅をしているので、一つひとつは浅くならざるを得ず、
「気づき」のためにこれを読んで、さらに他の本や情報に触れていくことで、より世界の見方が変わると思います。
「肥満の3人に1人は発展途上国にいる」
「世界にはいまでも2700万人の奴隷がいる」
「世界で3人に1人は戦時下に暮らしている」などなど、 日本にいると日の当たらないことや知らされないことがたくさん知れるきっかけに。
11. 石井 光太『絶対貧困―世界リアル貧困学講義』 (2011年、新潮文庫)
オススメ度:★★★
読みやすさ:★★★★
人生に与えた影響度:★★★
旅人に読んでほしい度:★★★★★★
この著者の本を読むきっかけになったのは、
中東に行く前に読んだ『神の棄てた裸体―イスラームの夜を歩く』が、きっかけです。
イスラムの性の実態についてのルポは、訪れただけの「旅」では見えないものがたくさん。
そして、仏教国にすむ障害者を取り巻く状況について書かれた『物乞う仏陀』や、
インドの物乞いの少年の話である『レンタルチャイルド―神に弄ばれる貧しき子供たち』など、取材を通して「かわいそう」というくくりではない、生々しい貧困の実態を描いてきたノンフィクションライターの石井光太の「世界の見方」をまとめた一冊。
一見してみえているものだけが真実ではない、ということに気付かせてもらえます。
おまけ。Guillaume Duprat 『地球のかたちを哲学する』(2010年、西村書店)
オススメ度:★★
読みやすさ:★★★★
人生に与えた影響度:★★
友達にプレゼントしたくなる度:★★★★★★
様々な地域、時代で、地球がどのような形をしていると考えられていたのかを、しかけ絵本でまとめられています。
こんな地球の見方、世界の見方があるんだ!と刺激たっぷり。
友達へのプレゼントとして、オススメです。
僕はこれらの本を参考にしていますが、人の数だけ世界の見え方があるかと思います。
他にも、「この本は是非!」ということを教えてもらえたら嬉しいです★