【シリア難民キャンプ滞在記】フランスのスティーブジョブズとバンクシー

 




 

スティーブ・ジョブズがフランスの難民キャンプに現れた。

 
と、言っても、もちろん本人ではない。
バンクシーが描いた絵である。
 
 
バンクシーといえば、メッセージ性のあるグラフィティアートを描く芸術家だ。
僕が彼の名前を知ったのは、パレスチナだった。
 
パレスチナでは、「ひとつの国に先進国と途上国がある」と言われるほどに、ユダヤ人(イスラエル人)が、元々住んでいたアラブ人(パレスチナ人)に対して、差別や暴力を用いている。
 
バンクシーは、そのイスラエルが作った分離壁に、イスラエルの暴力性を皮肉った絵が描いた。
そうした、世界の中にある不平等や違和感を、ゲリラ的な手法で描く。
 
ニューヨークで1ヶ月間、毎日、街角のどこかにアートを展示すると宣言し、警察の目をかいくぐってやり遂げたこともあり、その様子は映画にもなっており、現在公開中だ

 
 
 
 
 

フランスにある「ジャングル」という難民キャンプ

 
さて。
僕が今回、シリア難民を訪ねる旅をしているなかで、訪れたフランス。
 
「フランスに難民キャンプ?」というイメージはまるでなかったのだけれど、
ヨルダンで出会い、仲良くなったテレビ局の方が、
「今、同僚がフランスのカレーという町で取材しているから、見に行ってみたらどう?」と教えてくれたのだ。
 
その同僚の人とはすれ違いになってしまったのけれど、僕はフランスのカレーに向かった。
 
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夜にパリのシャルルドゴール空港に着いた僕は、翌日の朝にすぐ移動できるように、
北駅から徒歩5分の宿に泊まり、翌朝7時に電車に乗った。
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カレーまでは3時間。
その日の夕方には、デンマーク行きの飛行機に乗るため、滞在時間は数時間ほど。
それでも僕は行きたいと思ったのだ。
(なんなら、イスタンブールから、パリ経由でデンマークに行く飛行機より、この往復の電車料金の方が高価だったけど)
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カレーの駅に着き、「ジャングル」と呼ばれる港近くの難民キャンプに向かう。
パリに戻る電車、そしてバスの本数が本当に少なく、帰りのバスに乗り遅れると飛行機に乗れない。
時間に注意しなければ。
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最寄りのバス停から、徒歩20分ほど。
普段はコンテナで荷物を運ぶトラックで賑わっているかもしれないが、その日は土曜日。
人がほとんど通らない道を、とぼとぼと進む。
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道路の欄干の下に、警備車両が数台停まっており、
その向こうにテントが立ち並んでいる。
 
これが「ジャングル」なのだ。
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移民や難民は「お荷物」?それとも「人財」?

ふと左を見た時に、スティーブジョブズと目が合った。
 
LONDON CALLING「ロンドンが呼んでいる」という言葉のなかに、
初期のアップルコンピューターの端末と、身の回りの物を入れたごみ袋を持っている氏の姿がある。
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スティーブ・ジョブズの生物学上の父親は、シリア中部の町ホムスの裕福な家庭に生まれ、アメリカに博士号を取得するために渡ってきた移民だ。
 
もちろん、移民と難民では状況は違う。しかし、バンクシーは公式声明でこう言っている。
 
「私たちは、移民は国の資源を消耗させるものと考えがちだが、
スティーブ・ジョブズ氏はシリア人移民の息子だった。
アップルは毎年70億ドル(約8460億円)の税金を支払っている、
世界で最も利益を上げている会社だ。
そして、同社が存在するのは、ホムス出身の若い男性を(米国)社会が受け入れたからだ」
 
 
 
 
 
さて、僕は難民キャンプ「ジャングル」に足を踏み入れた。
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入口近くは、レストランや雑貨屋が立ち並んでいて、
地面はぬかるんでいる。
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これはヨルダン・イラクの難民キャンプもだったが、
居住区のテントがまったく違う。
 
僕が見てきた難民キャンプは、プレハブだったり、レンガだったり、「住む」ことが前提になっている。
しかし、ここの難民キャンプは「一時滞在者」のものだ。
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フランスの港町で難民キャンプがある理由は、入口のジョブズのところにあったように、
「イギリスに行きたい」と願う難民たちが、入るチャンスをうかがっているからだ
 
小さなテントに3人ほどが住んでおり、
シリアだけでなく、バングラディシュやイラク、スーダンなどからも来ていた。
 
 
マレーシアやイギリスの団体が支援にも入っており、外国人5〜10人ほどのグループを何組も見た。
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ジャングルの中の絶望

ふと目があったアラブ顏の青年に声をかけると、シリア人だった。
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道案内をしてくれたり、この場所の説明をしてくれ、
出身国によって、なんとなく住むエリアが違っていることや、
まず若い男がイギリスに向かい、あとで家族を呼び寄せようとしている人が多いと聞いた。
 
このあと話した、別のシリア人の青年も、妻と子どもを、トルコに残していると言う。
 
非常に小さなテントの中には3人分のベットがあるが、今は2人で住んでいる。
1人はイギリスを諦めて、ドイツに向かったのだそうだ。
 
 
「家族と離れて、寒く、汚く、ひどい場所にいる。
ここに来てから?もう5週間だな。
 
イギリスの国境が開く見込みだって?
わかりゃ苦労しないさ。まぁ厳しいだろう。
 
俺がただ、家族と平和に暮らしたいだけなのに。
 
愛する母国だと、いつ殺されるか分からないから、トルコに逃げた。
そして、妻子を残して、俺だけがフランスに来た。で、この有様だよ。
 
希望がない。
希望が、ないんだよ。
 
 
寂しそうな横顔。
申し訳ないと思いながら、写真を撮っていいかを尋ねたら、断られた。
僕が謝ると、「気にするな」とタバコの煙をふかす。
 
 
ため息のような白い煙が、青空に向かって消えた。
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数時間の滞在だった。
しかし、日本にいる時、知らなかった世界がある。
 
 
「見えていないからといって、存在していないわけじゃない」
 
その「存在していない」と感じるほど、遠い世界を身近にするには、
まず訪れること、自分の目で、肌で感じていくことだろうと思う。
 
 
 
 
そして、このジャングル。
先月、フランス政府によって完全撤去が始まった。
僕が出逢った彼らは、どこに向かったのだろう。
 
 

そこには、希望があるのだろうか。

 

 
 
 

 

 

 

 

 

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【近日予定しているイベント(2016/4/18更新)】

 

 

4月22日(木)夜 横浜
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5月29日(土)夜@大阪
履歴書に書ける旅3.003

 

 

6月4日(土)夜@大阪
へむり×完一.001

 

 

6月18日(土)夜@大阪
シリアを巡る旅.002

 

 

7月18日(祝)夜@大阪

 

 

上記イベントのほか、プロギャンブラーのぶきさん、伊藤研人さんとのコラボトークライブも企画予定です。

 

こうしたイベントを手伝ってくれるボランティアスタッフを募集しております!

 

 

 

 

 




 

 

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