旅が教えてくれない大切な一つのこと。〜「7つの習慣」と報道の歪曲〜

旅は自分を成長させることはできるけど、

その国や人を理解することはできない。

 
って、僕は思っています。
 
 
ちょうど「7つの習慣」を読んでいたら、好例が載っていたので紹介します。


 
「人はものごとを自分の見たいように見ている」
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例をあげよう。
 
友達に「貸して」と言われても、かたくなに人形を手放さない少女がいたとする。
 
その場面だけ見れば、多くの人が「少女がわがままだ」と否定的に評価するだろう。
 
だが、もしその人形が、前日に亡くなった少女の母親の形見だったとしたら?
 
少女の態度への印象はがらりと変わるはずだ。
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僕らが見ている世界は、自分の物差しで見た「世界」でしかありません。
 
現地の人と話してきた、と言っても、その国の言語を話せず、その国に数日間だけ訪れた人に、どれだけの本音を語るでしょうか。
 
(自分自身が母国語以外の言葉で、「自分の言いたいこと」を言えるかどうかを思い返してもらえたら容易に想像できると思います。なので、僕がシリア難民から話を聞くときは英語よりアラビア語で聞くようにしていました)
 
 
僕は協力隊時代、シリアで「リプロダクティブヘルス」という(正確にはちょっと違うけど、あえてわかりやすく言うなら)母子保健のプロジェクトに関わっていました。
 
要請としては「妊産婦死亡率が高い状況に対して、改善をする」というもの。
そして、JICA専門家によって「出産間隔を3年間、あけること」「産前検診、産後検診を受けること」というメッセージの伝達を広める活動がされていました。
 
 
で、僕がやったこと。
それは 「話を聞くこと」です。
 
 
言葉や人間関係、文化理解に最低でも1年はかかると思ったので、
ひたすら人の家に行き、話を聞き、アラビア語を学び、生活習慣を目で見て、話を聞いて、ライフサイクルを知ろうとしました。
当然ながら、季節や月によって全く状況は変わるので、
断片的であれ理解するために、どう短く見積もっても1年は必要です。
 
 
なので、「旅」では、それがすごく難しいと言わざるを得ません。
かつ、「共に活動する」というストレスがあってこそ見えてくる本音の部分も多くあります。
(短期間であれば、店員さんとお客さんのような、表面的に打ち解けあった関係は作れますが、長く一緒に働く同僚であればそう言ってられないような感じです)
 
 
 
僕が、そのような相互理解ができたと言えるかどうかは分かりませんが、
割とセンシティブな話題である家族計画について話をするようになり、
「なぜ子沢山なの?」という話を聞いていきます。
特に、男の子を望む傾向にありましたので、その点も気になっていました。
 
(僕の住んでいた当時、都会の平均出産数は3人程度でしたが、僕の住んでいた地域では、7人ほどは当然で、10人を超えることも珍しくありませんでした)
 
 
事前情報、というより、日本人の考える理由では、
「知識が十分でないから」
「貧しいので、働き手になってもらう」というものです。
 
 
しかし、彼らの子沢山の理由は、
「私たちには年金がないので、自分が年老いたときに、息子家族に養ってもらう。娘は結婚して他の村に行くだろうから、男の子が何人か欲しいんだ。事故や病気でなくなるとも限らないし」ということなど、
人によって様々でしたが、理由があります。
 
(「イスラムの教えで」と言う人もいましたが、宗教学校の先生によるとそんな教えはないらしく、宗教と文化が入り混じっているようです。しかし、それもまた、彼らのなかのリアリティであり、否定されるものではありません。)
 
 
最近はシリアのニュースを見ていても、
わずかな期間、それも戦争状態だけしか知らないフリーのジャーナリストの報道に、違和感を抱かざるを得ません。
 
僕の友人のジャーナリストは、本当に彼らの心を知るために何度も通い、時間をかけて信頼関係を作り、彼らの言葉を受け止めて、それを代弁しています。
しかし、大多数を占める「戦争」だけにフォーカスしたジャーナリストを見ていると、彼らの求める記事は、取材する前にあらかじめ決まっているように見えます。
そして、その言葉や映像、「証言」を引き出すために「取材」をしており、残念ながらそれがテレビや大手新聞の記事となっている現状があります。
 
 
 
もちろん、僕自身も「自分の見たいように、ものごとを見ている」ので、そう思うんだと思いますが、僕の感じた今と昔のシリアを、伝えたい。メディアが伝えられない部分を、心で感じたものを、伝えていく活動を、2016年は行ないます。
 
講演依頼やコラボでのイベント企画などもやっていく予定ですので、
共にシリアを学び、シリアを通して日本の平和や幸せについて考える機会を作れれば嬉しく思います。
 

 →講演依頼について

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