シリアの人たちの今を知る旅、最後の夜は
スウェーデンのストックホルムに住む、
エリトリアから来た青年のおうちでした。
彼の人生の話を聞くと、映画よりも映画のような話です。
なにせ、僕はそもそも、エリトリアの場所さえ僕は分かっていませんでした。
国民は男女問わず無期限の徴兵制の国で、
彼は徴兵2年目にエルトリアから3日間ジャングルを抜けてスーダンに逃亡。
スーダンに着いて、幸運にも10日目で仕事が見つかります。
17歳からの2年間、休みなく16時間労働を続けてお金を貯めて、
サハラ砂漠を1ヶ月かけて横断してリビアへ。
リビアから26時間の航海でイタリアに。
岸の近くで転覆して目の前で亡くなった人も見たそうです。
イタリアでは一ヶ月、書類を待って、スウェーデンに入国。
スウェーデン夫婦の養子になりました。
6ヶ月でスウェーデン語を話せるようになり、今はストックホルムで6年と半年。
時折、ヨーロッパに旅行にも行きます。
ただ、今でも海を見ると、密航の時の想いが蘇り、昔を思い出すそう…。
彼の手にしたノートには、スウェーデンまでの軌跡が書き残しています。
道中に亡くなった友人の名前も。
「壮絶な人生」と表現して良い経験をしているにも関わらず、彼はトコトン陽気です。
「人生はバランスなんだよ。
うまくいくこともあるし、大変なこともある。
だけど、笑うことって大事だろ?
仕事だけが人生じゃない。
人生に2度目は無いんだ。
この人生をどう生きるか。
旅したり、友達と過ごしたり、一人の時間を味わったり、
こうして海外からのゲストを招いたりね。」
生と死の間に何度も立たされた彼の人生は、
僕には想像できないものばかりで。
エリトリアという国さえろくに知らなかった自分が情けないほどだったけど、
こうして出逢えたことで、世界がまたひとつ広がったように思います。