軍隊からタクシーへ。アントワープで働く58歳が描く夢。

アントワープか、イスラエルか、アイスランド。どこか分からないけど、また会おう。

(アヴィ 58歳)


雨の中、バックパックを取りに行くのが嫌で、タクシーを呼んでもらった。
歩いたら40分かかる道だったから、多少の贅沢は仕方がない。

 

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車内に乗り込むと、ハイテクな機械が並んでいた。
バックミラーにはタクシーの料金が表示されるようになっている。
液晶は2つあり、1つはタクシー会社からの連絡が来るようになっていて、もう一つはナビだ。

「どこから来たんだ?」と運転手が尋ね、日本からだと言うと表情が緩んだ。
「日本か!文化も人も、素晴らしいところだな。俺も働けるなら日本で働きたいと思ってるんだ」と笑う。

「あなたはどこから来たの?」と僕が聞き返す。
「イスラエルからだ。4年間にアントワープに引っ越してきた」

イスラエルから来ている人は多いのかを尋ねると、アントワープには多くのユダヤ人が住んでいるらしい。
特徴的なヒゲや帽子の人が歩いているのも見た。調べると、約1万5千人~2万人住んでおり、ヨーロッパ大陸最大の正統派ユダヤ人街が中央駅周辺にあるらしい。

また、アントワープはダイヤモンド取引が世界最大で、最盛期は全取引の80%がアントワープで為されていたと言う。
ただ、現在は主導権ががユダヤ人からインド人に移りつつあるとのことだ。

 

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運転手との話に戻る。

「実はアイスランドに行こうと思っているんだ」
デンマークからのフェリーで、車を乗せても往復500ユーロでいける。
そして、向こうでもこのタクシーで仕事をするという。

日本で働くには、ビザが大変だからね。
アイスランドには友人もいるし、住む場所のめどもある、と。
ま、ダメだったら帰ってくるさ、とあっけらかんと言う。

「昔からタクシーの運転手をしていたんの?」と、僕が尋ねる。

「いや、違うよ。軍隊にいた」
「大変じゃなかった?」
「そんなことはない。仕事は好きだった」

「戦地には行ったの?」という質問が、喉まで出たけど尋ねられなかった。

目的地に着く。
17.5ユーロが表示されたので、20ユーロを渡す。

お釣りを2ユーロと、20セントのコインを僕の手に乗せて、
「5セントのコインがないな」と言う。

チップ制に慣れていたし「気にしないで」と言ったが、10セントコインを僕に渡して、
「良い旅を」と手を振った。

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